「新卒から最初の2年はひたすら失敗を繰り返していた」トランスリミット プロデューサー高屋理 氏が語るスタートアップに必要なやり切る力

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 会社設立から2年余りのスタートアップながら「Brain Wars」「Brain Dots」と世界で3500万ダウンロードを超えるヒットアプリを生み出しているトランスリミット。

「技術者集団」をテーマに高い技術力を持ったメンバーが集う同社において、先月初のプロデューサー職としてジョインしたのが高屋理氏。

大学卒業後、サイバーエージェントDeNAの成長いじるしいインターネット企業にて、計8年間の経験を積みトランスリミットに加わった高屋氏に、現在のルーツともなっているこれまでの経験を伺いました。

 

社会人1年目から新規事業に携わる

 

-- 今日は宜しくお願いします。最初に自己紹介をお願いできますか?

 

 高屋理です。29歳で社会人8年目になります。2009年に新卒でサイバーエージェントに入って、最初は新規事業の立ち上げ、その後プロモーションやプロデューサーという職種を経験しました。

その後にDeNAに行って、この4月からトランスリミットに入社したという感じですね。

 

--  1年目から新規事業の立ち上げやってたんですか?

 

そうですね。サイバーエージェントの新卒が配属されるのって、Amebaだったり、本部と呼ばれている広告代理事業本部だったり、本当に様々だったんですよ。その中でも伝説的な「社長室」という部署があるんですが、そこに配属されました。

その部署で、藤田社長と一緒に新規事業の立ち上げをやっていくというのが主な仕事でした。

 

-- 1年目から羨ましいですね。具体的にはどんなことをされていたんですか?

 

 当時、世間では恋愛シミュレーションゲームが流行り始めていた頃で、サイバーエージェントでも作りたいということになりまして。

藤田社長に「高屋くんどういうの作りたいか持ってきてよ」と言われたんですよ。どういうストーリーとかも自分で考えてみて、みたいな感じで。

社会人になってすぐ、もうほんと2カ月とか3カ月なんで、どうしていいかも全然わからなくて。推理小説が結構好きだったこともあり、やっぱり好きなことから派生させたほうがいいんじゃないかと思って、恋愛シミュレーションゲームなのに、火曜サスペンス劇場をモチーフに作ってみたんです(笑)

 

-- 火曜サスペンス劇場!僕も好きでした(笑)

 

あれをもじって、当時ガラケーだったんで『モバイルサスペンス劇場』というタイトルでやってみたんですが、自分でちょっと書いてみても全然シナリオを書けなくてですね。

「ヤバい」ってなり、もう誰か他の人に書いてもらうしかないと。シナリオライターの養成してる学校が原宿にあるんですけど、そこに行ってコンペをやってみて、編集さんみたいなことをしてシナリオを作ってみたり。けども全然だめで。

どうしよう、どうしようって全然うまくいかなくて。最後のほうはもう何つくっていいか全然わかんなくなって、『恋は諸行無常』っていうお坊さんと恋をするみたいな恋愛シミュレーションゲームをつくったりしようとしたんすよ。

結局3、4カ月ぐらいしかいなかったんすけど。もう何1つゴーサインも出なくて、うまくいかなかったっていう感じですね。そのあとにAmebaっていうところに異動して、そこではまたそこも新しいサービス立ち上げみたいのやらせてもらってて。

 

とにかく結果を残せなかった2年間

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--Ameba内ではどんなことをされていたんですか?

 

ガラケーのキャリア公式サイトみたいなもの、特に絵文字とか占いなどのサイトが流行っていたので、そのキャリア公式サイトを自分達で立ち上げようと。

当時一番流行ってた、女性の生理周期予測のサービスがあったんですが、それを自分は男なのに立ち上げをして。ただ生理周期予測するだけじゃだめだから占いとかやろうとか、性格診断のコンテンツもあったほうがいいんじゃないかって、そういうのも外部と連携して調達してきて、それを載せてつくったり。

キャリア公式サイトってPowerPointで資料を数百枚つくって、全部のサイト内での遷移を描いたやつを数百枚つくって出して、数カ月審査されるみたいなのを、全部1人でやってましたね。入社1年目の夏ぐらいだったと思います。

その次はiPhoneが出たんですよ、多分、そのタイミングぐらいで。そしたらiPhoneのアプリだ、みたいな感じになって。Amebaがタレントさんとのつながりがあるメディアだったので、そこを巻き込んでアプリを作ったりしてましたね。

 

-- すごい濃密な1年目ですね(笑)

 

本当そうなんですよ(笑)

2年目のタイミングでプロモーションを担当してほしいと言われまして。テレビ局さんとAmebaがよく仕事を一緒によくしていたんですが、その中の1つにアバターサービスがあったんですよ。

それでそのサービスの提供番組の担当をすることになりまして、タレントさんにアバターのつくり方を教えたり、マネージャーさんやテレビ局のプロデューサーさんに、どのように使って欲しいかを説明したり交渉するということをやってました。

 

-- Webを使ったプロモーションとかではなくて、テレビだったんですね。

 

そうですね。番組の中でどうやったらいい感じでサービスが出るかとかひたすら考えていました。テレビ局の人は、本当におもしろいと思うものをやりたいって言われるので、それがサービス的には全然合わないものだったりもするんです。

お互いにやりたい方向性があるので、「世界観があるので、こういう風に企画を変更したい」と言うと「は?何言ってんの?つまんないじゃんそんなの」みたいなやりとりがよくありました(笑)

これが2年目にやっていた仕事なんですが、1年目から2年目はほんとに全然成果が出なくて、ひたすら失敗をしてるっていう感じでしたね。色んな人に助けられてチャンスも与えてもらってたんですけど、あんまり成果は出せずに、周りの同期がどんどん活躍していく中で、徐々に取り残されていったという2年間でした。

 

自分の作ったものをユーザーが使う感動

 

-- 3年目以降はそれまでと何か変化があったんですか?

 

そうですね。3年目からアバターサービスのプロデューサーをやらしてもらうことになったのですが、これが自分の中で1つの転機でした。自分自身でもそれまで成果出なくてほんとに評価されてないことをわかってましたし、3年目のタイミングでもう言い訳するのをやめようと。

それまで結構人のせいにしてたというか、自分はとりあえずがんばっとけばいつか誰かが声かけてくれて、自分の努力を認めてくれるみたいな、結構わがままな思想というか思い込みをしてたなと気づいたんですよね。

もうひたすら自分の全部せいにして、自分と向き合う努力をしようみたいなこと結構思って。

 

--それって誰かに何かを言われたとかではなくて、自分で気づいたんですか?

 

最終的には自分で気付きましたね、はたと。3年目になるタイミングでそれまでのことを振り返った時に、社長室からAmebaへ行って、さらにプロモーションをやって、3カ所で全くうまくいってないと。

3年目ぐらいになると一人前になるってよく言われるんすけど、「自分相当ヤバくない?」と流石に焦りました(笑)

それまでは仕事をした実感みたいなもののがあまりなくて、言われたことをただ一生懸命やってるだけだったんです。

プロデューサーになってから自分で考えてとにかく手を動かすと少しずつそれが形になっていって。担当していたアバターサービスって結果が目に見えて分かりやすかったと言うか、自分が新しいサービスやイベントを実施すると、目の前でユーザーさんが実際にアバターとして動いているわけですよ。それにものすごく感動しました。

今プロデューサーというかものづくりやってるのも、結構その体験が一番でかいかなと思いますね。

 

-- 自分が作った機能やイベントに対して、ユーザーさんの反応が見えるのが嬉しいということなんですかね。

 

ユーザーさんに届いていて、かつそれがわかりやすく、動いてるのがわかるということですね。

実際にユーザーさんがしゃべって、「これおもしろい」とか「かわいい」とか「楽しい」とかっていうのを見たときに、「自分って人のためになってるのか」って初めて思いました。 

 

サイバーエージェントDeNAを経て、トランスリミットの初の企画専任者の入社

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-- サイバーエージェントの後は、DeNAにいかれたんですよね?

 

そうです。DeNAに行ったのはサイバーエージェント時代にアバターサービスのプロデューサーをやってて、「あ、ものづくりっておもしろいんだ」と思ったからなんですよ。

自分なりに考えた「こうしたらユーザーさんが喜んでくれるんじゃないか」といった仮設を試していくのがプロデューサーや企画職の仕事だと思うんですけど、それがすごい自分にとっては向いていると思ったんですよね。

ある時、プロモーション職にもう1回戻ることになったんです。自分にはよりできることがあると思って下さったからだとは思ったんですけど、プロデューサーをしていたときの楽しさや、やりがいみたいなものが忘れられなくて、自分はやっぱりゲームとかコンテンツ作りをやりたいんだと改めて実感しまして。

それで、DeNAに入ったっていう感じですね。

 

-- その時は、ものを広げるという仕事よりも、自分でものを作るという仕事をやりたかったということですかね?

 

まずは、良いものものがあってこそだなと思うたんですよね。特にインターネットはユーザーは良いものじゃないと、手にしてもハマってはくれないし価値を感じてはくれないですから。

DeNAではプランナーから始めて、最終的にはシニアプロデューサー職について、いくつかの既存のゲームをそれぞれのプロデューサーと一緒に運営や戦略立案をやっていました。

 

-- DeNAで経験を積まれた後、今度はトランスリミットに転職されたわけですが、その経緯を教えて頂けますか?

 

トランスリミットのCEOである高場とはサイバーエージェントの同期でして。入りたての時に、新人宿泊研修のような合宿があって、その時に同じチームだったんです。

結構厳しいので泣く人も多いですし、僕も辛くて号泣してて。ただその時に彼を見ると一切泣いてなかった。「何だこいつ?」というのが最初の印象ですかね(笑)

それからもたまに連絡はとったりしていて、自分がDeNA入って1年半ぐらいの時点で、「企画職の人を探しているから良かったら一緒にやらない?」と話をもらったんですけど、その時は断ったんです。その時は、自分が行っても何もできないなと思ってたので。

 

-- 一度は断られていたんですね。

 

はい。ただ、DeNAにはそれから約1年半在籍していたんですが、その中でいろいろと経験をさせてもらいまして。シニアプロデューサーだったり、それまで以上にゲーム部門で責任を負わしてもらったことで自信がつきました。

その時に、達成感はもちろんあったんですけど「僕自信が本当にすごいのか?」「僕の実力でこれはできてることなのか?」ということを考え始めるようになって。自分1人でやったときに、どれぐらい通用するのかを試したいと思うようになったんです。

そのタイミングで高場と食事に行く機会がありまして、「一緒に世界で勝負しようよ」みたいな話をしてもらって。トランスリミットには企画職が1人もいなかったので、これできたらほんとに自分でやったって言ってもいいのかもなと思って、入社しました。

 

-- なるほど。今は開発の部分以外は全部やっているんですか?

 

コードを書く作業は自分ではできないですが、それ以外の部分でゲームの細かい仕様やキャラクターの設定、世界観、ゲーム全般の内容に関わっています。

あとはそれこそ、このゲームを事業としてどのように成り立たせるのか、リリースして1カ月でどれぐらいの人が入ってきて、その人たちがどれぐらい続けてくれて、これぐらいの収益が見込めるという事業計画を作ったりしています。

 

--なるほど。今って企画やマーケティングをメインで担当しているビジネスサイドの方は、高屋さん以外いらっしゃらないんですか? 

 

もう1人いますね。ただ、もう1人は人事とか広報を担当しているので、サービスの企画やマーケティングに関しては僕1人だけです。

トランスリミットは「技術者集団」と言っているくらいですし、実際にそうなので、そこに企画職として1人で飛び込んでくのは正直不安でしたね。

 

-- 10数人いらっしゃって、初の企画職ですか?

 

ちょうど20人目の社員なんすけど。初の企画職ですね。みんな温かいので、全然すんなりいけたんすけど。「これだから企画の人は困る」みたいなこと言われた嫌だなと最初はビクビクしてましたけど(笑)

 

-- ゲームの中のこと以外もやられるんですか?これまでやってこられたようなプロモーションの部分だったりとか。 

 

はい。今はまだゲームを作っている段階なのでまだ先の話ですけど、今後考えていくことになると思いますね。

どういう媒体でやるのかとか、どのような予算感、スケジュール感でやるのかとか。

それこそ最初からテレビCMもWeb出稿もガンガンいきますっていうふうにするのか、それともまず最初はWebでちょっとずつ集めて、ある程度までいったらテレビ投下しようとか。投下するときに例えばどういうテレビ局のどれぐらいの時間帯で流すのかとかも全部決める感じになると思います。

 

-- 今までの経験がすごく活きていますね。

 

テレビCMの話とかは、実は自分自身では経験したことがなくて、サイバーエージェントでプロモーションを担当していた時に隣の先輩と上司の会話を聞きながら、「こういうふうにしてやるんだ」と知りました (笑) あのとき盗み聞きしといて本当に良かったです (笑)


それに限らず、プロデューサーや、新規事業の立ちあげ、プロモーションなど幅広い仕事をしていたことによって、自分のできる幅が広がったので、いろいろやっておいてよかったなと思います。

 

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(後編に続く)