「スタートアップと同じくらいのスピード感で成長していく会計事務所を目指して」Kepple神先孝裕氏の目指すスタートアップ特化の会計事務所のあり方

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 前回に引き続き、従来の会計事務所の域を超えて、スタートアップのバックオフィス業務を幅広くサポートする会計事務所Kepple Accounting Officeの代表・神先孝裕氏のインタビュー後編をお届けします。

自分たち自身がスタートアップとしてスピード感を持って働き続けているという神先氏の働き方や、Keppleのこれからは必見です。

 

前編はこちら

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スタートアップのスピード感の違いに刺激をうける

-- そもそも会計士という仕事にはいつくらいから興味があったんですか? 

 大学2年生くらいですね。 ただ最初は正直大した動機はなかったんです。とにかく時間がありあまっていて。普通に就活するのは嫌だったんで、何かやらないとなと(笑)

だから今みたいにスタートアップイベントが頻繁にあったら、そっちの道もあり得たかもしれないなとは思います。でも僕が大学生の頃は、今ほどスタートアップがメジャーではなかったので。わかりやすい資格か、留学か悩んで会計士資格をとりました。  

とりあえず食っていけるような資格を取って、それで独立しようと。

 

 -- そうなんですね。じゃあ昔から会計士に憧れがあったとかではなくて、初めはノリに近かったんですね。

そうですね、ノリに近かった。そこから実際に監査法人に入って徐々に独立以降のイメージが湧いてきて、今に至るという感じです。

 

 -- そこからスタートアップに関わりたいと思って実際に独立されて。初めてスタートアップ企業との接点はいかがでした?

Keppleとして独立後に、先輩の会計士の紹介で大手インターネット企業の管理部門の仕事を業務委託で受けました。そこで感じたのは監査法人の頃は、大手企業がクライアントとなるケースが多かったのですが、インターネット企業はスピード感が全然違うなっていうのがありました。あとは、社内の空気、雰囲気が圧倒的に違いました。 

 

-- どのように違ったんですか?  

 エネルギッシュで、常に盛り上がっているというか、会話が飛び交っているんですよね。大手の企業では、そういったことがあまりなかったんですよ。静かにカチャカチャ仕事をしているイメージが非常に強いので。

それまでが40歳〜60歳の比較的年配の方の中にいたので、20〜30歳代の方が何人も集まって働いているという環境に刺激を受けました。もちろんポジティブな刺激です。同年代の人がグループ会社の社長をやっていたりして、こんな環境があるんだなっていうのを見てて思いました。

 

 -- 初めてのスタートアップ体験ですもんね。  

 スタートアップと言って良い規模かわかりませんがそのインターネット企業はとてもすスタートアップ的で、意思決定も凄く早かったですし、人事の異動も役員の登用とかも、とにかく動きが早くて。そこも自分としては新鮮というか衝撃的でした。 

 

スタートアップに詳しい会計士は少ない

 -- その次の仕事が、立ち上がったばかりのカウモだったんですか?  

 最初のスタートアップのお客様はカウモでした。カウモの太田さんと渋谷のカフェで契約をしたのですが、太田さんもまだ起業して日も浅く、「そんなにお金の余裕はないんですが」みたいな相談を受けて。

当時はお互いにちゃんとしたオフィスもなくて、僕は自宅でしたし、太田さんも小さなシェアオフィスを借りている状態でした。

 

 -- 最初の印象って、どんな感じだったんですか?その前のベンチャー企業よりもかなりベンチャーというか。まさにスタートアップだったと思うんですけど。

印象としては、Skyland Venturesなど3社のベンチャーキャピタルから既に投資が決まっていた状況だったので、まずそこに衝撃を受けました。スタートアップ界隈に僕も入っていなかったので、事業が完全に立ち上がっていない段階で数千万円の資金調達をしてスタートするっていう事実があるんだと。

 

 -- 確かにそうですよね。  

加えて当時、太田さんも20歳だったんで、それも驚きました。

太田さんの年齢的な部分と、彼の会社にそれだけ資金が流れ込むっていう事実をそこで知って。凄く刺激を受けました。

実際、会計士は若手であっても、そのような投資が行われていることは知らない方が多い気がします。今でこそ徐々に増えてきた気もしますが。

 

 -- そうなんですか。それは事業が立ち上がる前に投資が行わるということに関してですか?

それも含めてですね。スタートアップに詳しい会計士って少なくて、会計士であれば全員わかるという訳じゃないんです。

資金調達の際の適正なバリュエーションがどのくらいなのかとか、新株予約権や優先株、資本政策だったり、そういった内容を事例踏まえて外部からアドバイスできる専門家も、凄く少ないイメージがありますね。

 

 -- なるほど。会計士や税理士であれば誰でもできるみたいなことではないんですね。 

全然ないです。僕自身もカウモの太田さんと知り合ってから勉強して、Skyland Venturesの木下さんに教わったり、実務で覚えてきた面もあるので。   

やっぱりやりながら勉強していくしかないんですよね。私達Keppleは、今は事例が凄く集まっていているので、キャッチアップのスピードも凄く早いと思うんですけど。当初はまったくそういう環境ではなかったです。

 

-- 監査法人で実務経験があったとしても、スタートアップとなるとちょっと特殊だったりするんですか? 

そうですね。例えば優先株や新株予約権付社債という言葉は会計士であればわかると思うんですけど、それが実際どんな内容の契約がスタートアップシーンで使われているか、どんな条項が一般的なものか、投資家側が投資時に抑えたいポイントはどうか、起業家は知っておくべき情報はどうか、そういった細かい内容は、なかなか触れる機会は少ないと思います。

バリュエーションも、これくらいのフェーズでプロダクトがこんな状況のとき、実際どれくらいのバリュエーションで調達できるのかっていう事例って、やっぱりリアルな現場じゃないと、その情報はなくて。ようやくそういうのが、なんとなく感覚的にわかるようになってきたのは、1年前くらいからです。 

  

スタートアップと同じくらいのスピード感で

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-- 会計の違い以外で、スタートアップならではというか、実際にスタートアップの方と働かれて驚いたこととかありましたか? 

スタートアップの初期では事務所で寝泊まりして働いていたりとか、朝打合せでいくと、寝袋でみんな寝てる光景とかは、最初は「ありえない」という感じでした(笑)

その環境で、みんな明るくて、楽しく働いている姿を見ると衝撃を受けますよね。大手企業だったら、みんな基本は定時に帰る訳ですから。

自分達がやりたいことを、1つの目標に向かって皆でひたすら頑張るっていう、その空気感が個人的にもすごく好きですし、スタートアップならではだと思います。

それは、やっぱり起業家がそれだけの思いを込めて事業をしているからこそ、そういう空気感が出せるのかなって。凄いですよね。

 

 -- 今ではそんなスタートアップの方と一緒に仕事をされる機会が多いと思うんですが、神先さん自身の働き方にも変化があったりしましたか? 

 設立をしてから顧問として関与し始めて、その後ファイナンスサポートもするケースもあるのですが、大型の資金調達が決まると、事前にやることがかなりあるんです。

事業会社から投資を受けると、過去の決算資料や直近までの試算表、過去の議事録であったりとか、先方がデューデリジェンスをやるにあたって必要な資料を短期間のうちに提出が求められるんですね。でもそれらの資料ってスタートアップがもともと準備してないものも中にはあるんです。

それを「明日までに頂きたいと言われてるんですけど」と突然相談を受けて、僕が土日で仕上げるとか、無茶振りじゃないけど、そういうことも結構ありましたが、最近は慣れてきました(笑)。クライアントのポジティブな変化・対応に少しでも関与できて貢献できるのは非常にやりがいを感じます。

 

 -- そういう意味では神先さんの事務所もスタートアップですよね。働き方としては。 

 そうですね。働き方としてはそこを目指しているというか、スタートアップと同じくらいのスピード感を大切にしたいなと。

スタートアップに負けないスピード感で仕事をこなすことができれば、顧問先から感謝して頂ける局面も増えるかなと思ってます。

 

 -- 実際スタートアップと仕事をしていて、大変なことってないですか?スピード感もそうですし、一般的な段取りとかも無視していきなり依頼がくるみたいな(笑)

あります。頻繁に(笑)

凄く直前に言ってくるとか。あとは夜とか朝とか関係なく連絡を取り合うとか。土日もあまり関係ないですね。

Facebookのメッセンジャーで常にやりとりしてるのですが、僕含め、メンバーが休みの日でもそれぞれお客さんとやり取りする形で対応しています。

スタートアップはスピード感が凄く大事ですし、重要なんで、そのときに聞いたことは、そのときに消化したいんですね、みなさん。

 

 -- そこまでがっつりサポートできるのってすごいですね。  

大変といえば大変なんですけど、自分が貢献できてる実感がすごく湧くんですよね。

ちょうど起業家に足りてない管理面の知識、経験を提供できてる実感があるので、やりがいがあります。みんなポジティブで、テンション高くて、凄く1つ1つ感謝してくれますし。

 

スタートアップの税理士事務所といえばKepple と言われるように

  -- スタートアップに足りないものという話でいくと、管理面の知識以外で他にありますか?この部分を今後はもっとサポートしていきたいとか。  

 最近思うのは、やっぱり人材周りです。スタートアップの、特にシード期の会社で不足してるなって思うのは、採用だったり、既に採用した社内人材の評価。あとは、給与の決め方であったりをサポートする人材がいないと思っています。

会計税務は税理士がいます、社会保険の手続関係は社労士がいます、でも社内の人事制度面でアドバイスできる人っていうのはなかなかいません。シリーズBとか、早くてもシリーズAとかで徐々に外部の人事アドバイザーが出てくるようなイメージを持っていて。

それまでは、なかなか社内の人材に対する評価とかが決まりきってない。なので業績が急に伸びると給与をすぐ上げちゃったりとか。それが一律昇給だったりとか。どうやって社内メンバーを評価していくか。そういうところが、あまりかたまってなかったりするんです。そこの人材や制度が不足している気がします。

企業としてのビジョンをいつ作り上げるかとか、そういったところも関係してくると思うんですけど。組織内の人材を惹きつけていく上で、不足してるなと思います。

 

 -- そこに対して何かやっていきたいことはあるんですか? 

 クライアントに関しては、そういう人事制度とかのアドバイスのできる人材をうまくマッチングさせていきたいなとは思ってます。実際に1人いて、クライアントにアドバイスお願いしますっていう話はしたりしてます。

 

 -- 税理士というより、ベンチャーキャピタルみたいですね。  

 そうですね。VCさんと多少被るところはあると思います。採用した社内人材を、どう評価していくかという社内の人事制度の設計などにおいては、現状VCさんもサポートしきれていないと思うので、その点で外部のHRアドバイザーをご紹介できたら喜んでもらえるかなと思ってます。全然足りていないですね。カウモに1人入った人もいます。

 

 -- スタートアップの信頼出来るアドバイザーは必要そうですね。

 カウモに入ったHRアドバイザーが堀尾さんといいますが。ああいう方々がもっとシード期の会社と触れ合う機会があれば、変わるだろうなって。従業員数が10人超えてきた辺りで、そういう課題が出てくるので。

急成長して利益が出始めると今期ボーナス払おうかとか、社長からするとそういう心境になるんです。別にボーナスを払うことが悪いことだとは思わないですが、何か指針がないと間違った意思決定をしてしまうのではないかと思ったりするわけです。

そこにきちんとした人事制度ができていれば、起業家はそれに沿って支払って、評価して、昇級させていくだけでいいので。意思決定がブレないんです。そこをサポートできる人材が今後は必要かなと。

私達自身も人事領域もサポートできるように、うまく外部と連携してやっていきたいです。顧問先を見ていてもそうなんですが、やっぱり伸びてる会社ほど困るんですよね。

  

 -- スタートアップの方と付き合っていく上で、大事にしていることというか。意識してることってありますか。今後チャレンジしたいことと合わせて最後に伺えればと。

 

自分もベンチャー精神を持つっていうのは、あります。同じ立場で一緒に成長していきたい。どうしたらもっとスタートアップの成長に貢献できるのかは常に考えてます。

それはたぶん、記帳申告っていう今までの税理士業務をやってるだけだと、凄く不足していて。それって、単なる外注になってしまうので。

例えば必要な人材を紹介できたりとか。それは社内人材に限らず、アドバイザーも含めて。あとは必要なタイミングで資金の手当てをできたりとか。スタートアップ同士をうまく繋げたりとか。そういう役割をKeppleが担って、スタートアップのエコシステムを作っていくことに貢献していきたいです。  

スタートアップでは社長の時間が最も大事だと思うんです。だから彼らが事業に集中する時間をいかに増やすかっていうところですよね。

いわゆる事業の成長に、あまり関わりがないような業務を全て私達が巻き取る勢いでやることで、結果クライアントの事業成長に貢献したいという意識でやっています。 

AZXというベンチャーサポートを積極的に支援している弁護士事務所があるんですけど、「スタートアップの税理士事務所ならKepple」と言われるような事務所にしていきたいですね。

 

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