「毎月作ってるものが違うくらい、高速で作って壊すを繰り返す」トランスリミット執行役員・早川豪氏に聞くヒット作を生み出すマインドセット

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世界に響くサービスを作るというコンセプトで、立て続けにヒット作を生み出しているスタートアップ・トランスリミット。現在リリースした2つのゲームアプリ「Brain Wars」(1500万ダウンロード)と「Brain Dots」(2000万ダウンロード)はどちらも1000万ダウンロードを超え、累計ダウンロード数は世界で3500万以上に上り、今もなお増え続けています。

それを支えるのが、高い技術力。「技術者集団」をモットーに、社長を始め社員の9割がエンジニアで構成される同社には、様々な企業から優秀なエンジニアが集まっています。

今回はそんな技術者集団の中から、執行役員・リードエンジニアとしてプロジェクトを牽引している早川豪氏に、ヒット作を生み出すための考え方や仕組みを伺いました。

 

半分マネージャー、半分プレイヤー

 

-- 最初に早川さんの現在のポジションというか、業務内容について教えて下さい。

 

今自分は、執行役員という肩書きが付いていますが、リードエンジニアという役割で業務をやっています。リードエンジニアっていうのはエンジニアたちのトップに立つ、エンジニアを率いていく存在っていう感じですね。

具体的な業務としては、今新規でLINEのゲームを作ってるんですけど、そのプロジェクトのリーダーとして全般を見ています

リーダーとしてまずメンバーのマネージメントとか、進捗を感知して、クオリティを上げるために色々案を出したり、クオリティ担保したりっていう、メンバーのマネージメントというものをやっていまして。

あとは自分でもクリティカルな部分は実装をして、ものを作っていくっていう感じで。

まあマネージメントと、自分でもプレーヤーってのを両方をやっているっていうかたちになります。

 

--マネージメントとプレイヤーだと、割合としてはどっちのお仕事が多いんですか?

 

うーん、今はまあ半々ぐらいですかね。リードエンジニアと言っても、自分でプレイヤーとして手を動かしている時間もけっこう多いんです。

 

--そうなんですね。ちなみにプロジェクト自体は今は何名ぐらいでやられてるんですか?

 

プロジェクトは全員ですね、会社の。一点集中で、今LINEゲームをみんなで作っているっていう感じになります。

 

--一点集中でみなさんで作るって素敵ですね。今回のプロジェクトを期に入社されたんですか?

 

いえ、そういうわけではないですね。自分がジョインしたのは2014年の6月です。今から2年弱前ぐらいに会社に入ったっていうかたちになりますね。

 

--ジョインされた当初はどんなことされていたんですか?

 

ジョインした頃は、まだ最初のプロダクトであるBrain Warsがリリースされてないときだったんですよね。なんで、まずBrain Warsの開発、特にサーバーサイドの実装を自分はやっていました。

 

プロダクトを作る上では、一切の妥協をしたくない

 

--そこからどのようにして今に至るのでしょうか?

 

ジョインした直後、Brain Warsを開発していた時はまだ少人数で、その頃は自分と社長の高場、CTO、デザイナーとか数名でやっていたので、自分は実装をメインでやっていました。

Brain Warsをリリースした後から、徐々にインターンの学生とかが増えてきて、自分がプロダクトの品質担保やコードレビューをしたり、そういったマネージメントとかをやるようになっていきました。

 

--Brain Warsのリリース後あたりから、徐々にマネージメントをされるようになってきたんですね。

 

 

はい。Brain Dotsをその次に出したんですけど、開発が開始したタイミングでは自分も基本的に開発をしました。それがリリースが近づくに連れて、全体のマネージメントをやるようになっていって。

全体の進捗を確認したり、品質の高いプロダクトを作るために、メンバーのコードレビュー等をやっていたという感じですね。

そして今は、LINE向けのゲームを作ることになり、プロジェクトが動き始めるタイミングで自分がLINEゲームのリーダーになって、リーダーとしてマネージメントをしつつ、自分で実装を進めるっていうのを並行してやっています。

 

-- 全体のマネージをしつつも、ずっとプレーヤーとしても前線で開発をやられてるらっしゃるというお話でしたが、今後もプレーヤーでありたいという思いはありますか?

 

プレーヤーでいたいっていう気持ちはもちろんありますね。

で、やっぱりプレーヤーでいなくちゃいけない面もあって。うちの会社は若手が多いので、難易度の高いところだったり、高いクオリティが求められるところ、ちゃんと作らなくちゃいけないものっていうのは自分でやるようにしているっていう感じです。

大事なところはちゃんと自分で手を動かして作るっていうふうに心がけています。 継続してヒット作を生み出すためには一切の妥協をしたくないんですよね。

 

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ヒット作を生み出すために、「作っては壊し」をひたすら繰り返す

-- プロジェクトのリーダーをされているので、チームの目標がイコール自分の目標かもしれないですけど、今の目標というかミッションを伺えますか?

 

まずはLINEゲームを確実に当てるっていうことですね。で、売上をしっかり出すっていうのが直近の一番の目標になります。プロジェクトのリーダーをやっている以上はまずはそこはマストです。

 

それを越えたら次々に新しくヒットする作品を出していくこと。1回ではなく継続してヒット作品を作り続けるっていうのが組織の目標でもありますし、自分の目標でもあります。

 

--それを達成するために大切にされていることや、具体的なアクションがあれば教えて頂けますか?

 

はい。まずは自分たちは技術者の、エンジニアの集団なので、一度作っては壊しみたいなことを何度もやって、アプリのクオリティを高めていくんですね。 とにかく改善を繰り返す。

 

--作っては壊し、ですか。

 

作っては壊し、作っては壊しっていうのを積み重ねてどんどんクオリティの高いものを作っていく。

通常だとまず企画があって、それをベースにエンジニアたちが開発をしていくっていう、トップダウンの流れが多いんですけど、私たちの会社はエンジニアが主体の会社なので、ボトムアップで積み重ねてクオリティの高いものを作るっていう開発スタイルを取っています。

他の会社ではあまりないプロセスかもしれませんが、それがやっぱり大事だと思っていますね。

 

 --大事というのはどの部分が大事なんでしょうか。ボトムアップでやるからクオリティが上がるっていうことなんですかね?

 

そうですね。改善を常にハイスピードで繰り返しているっていう部分が特に大事ですね。

1回作ってみると「ここがだめだ」とか「もっとこうしたほうがいい」というのがどこかしらあるんです。

その時に「じゃ改善します」といってまた新たに開発するというのを何回も繰り返しているっていう。それを繰り返すことで、どんどんクオリティが高いものに仕上がっていくイメージです。

 

 --どのぐらいのペースというか、例えば1つのプロダクト作るときに、どのくらいの壊したものがあったりするんですか?

 

もう数えきれないです(笑)

でもとりあえずは、簡単に動くというか、動いてそれがおもしろいのかおもしろくないのかってのが、何となく判断できるレベルのものまでは作りますね。

そこまで作って、実際やってみて判断します。おもしろくなければ全く別のものを作るし、おもしろそうであれば、どうすればそれをもっとおもしろくできるために深掘りして改善していくとか、そういったプロセスになりますね。

 

何度も繰り返すことに大きな意味がある

--今もLINEゲームを試しながら作って、壊して、改善してるフェーズなんですよね。

 

まさにそうで、今は日々作って改善してっていう感じです。ゲーム性でいったらもう4つぐらい違うものを作ってるかもしれないですね。4パターンぐらいのゲーム性、いや5個目ぐらいかもしれないです。

 

--どのくらいの期間でベースのものができるんですか?

 

まちまちではあるんですけど。1回使ってバーッて作っちゃうものもありますし。でもそれか何回も、1回作って、でもやめようってごっそりやめて。でも何かしらつながってる部分があるんですよね。

前やったものをごっそり変わるんだけど、一部では使えるものもあったり。そういうふうにしてごろっと変える場合でも、何かしら得られるものがある。だから何度も繰り返すことに大きな意味があります。

 

--同時進行で何人もの人がプロトタイプを作ったりとかすることもあるんですか?

 

そういうフェーズもありますね。

例えば企画の方向性が全く決まってなくて、どういうゲーム性がいいのかって模索してる段階だと、いくつか同時に試すとかいうのはあります。

LINEゲームを作るっていっても、最初の頃はどういう風にしようかってのがあまり決まってないときとかもあるので、何チームかに分かれて、「ここのチームは、こういう方針を試してみよう」とそれぞれの方針を決めて、並列でやります。

 

--なんか社内コンペみたいな感じですね。楽しそう(笑)

 

そんな感じですね(笑)

それで3つぐらい並行でやってみて、どれがいいかっていうの決めるっていうようなやり方は取ったりしていますね。

 

--  例えば、じゃあこういうゲームを作ろうだったり、こういう機能を作ろうっていう企画は、エンジニアの方々が出すんですか?

 

エンジニアももちろん出します。社長からこういうのが作りたいっていうときもあれば、そういうときもありますし、エンジニアから企画を出すときもある。

これも作りながら「こうしたほうがいいんじゃないか?」っていうように現場でどんどん新しいアイデアが生まれてくるので、それに応じて方針自体もどんどん磨きがかかっていきます。

 

「毎月違うものを作ってる」くらいスピードとクオリティにこだわる

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--ご自身がチームをマネージするとき注意されてること、意識されてることとかってありますか?

 

やっぱり各々の実装のスピードを落とさないというのはすごく大事にしていますね。

作って壊して作って壊してってのをやるんで、自分の作ったものがなくなることもしょっちゅうあるんです。だからいかに速く作れるかっていう、スピードの部分です。

とはいえ、クオリティを落としちゃいけなくて。クオリティの高いものを速く作るっていう、エンジニアのスキルにつながると思うんですけど、そこにこだわろうっていつも伝えています。

速く、クオリティの高いものを作るようにもうひたすら頑張るっていう(笑)

 

-- そこはもう最終的には一人一人の技術になってくるんですか?

 

そうですね。個人のスキルは大切だと思います。

我々技術者、エンジニアの集団なので、一人一人が力をつけて、優れたエンジニアになっていくっていうことが全体のスピードやクオリティをあげることに繋がると思っています。

うちの会社作り直しがまた速いんですよ、みんなエンジニアで実装力があるので、作り直すっていっても結構な速さで新しいものができるっていう。1カ月もたたないうちに。

だから毎月作ってるもの違うみたいな(笑)

 

(後編に続く)