「創業期のスタートアップの社長は時間の3割を採用に使うべき」キープレイヤーズ高野秀敏氏に聞く採用(HR)のポイント

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 10年以上に渡り、スタートアップ企業の人材に関する課題解決を支援するプロフェッショナルである株式会社キープレイヤーズCEO高野 秀敏氏。ヘッドハンターとしての仕事に加え、クラウドワークスやメドレーなど成長スタートアップの役員経験やエンジェル投資家として複数のスタートアップを見られてきた同氏に、スタートアップの採用(HR)のポイントを伺いました。

 

キープレイヤーズ高野 秀敏氏の記事はこちらもあわせてご覧ください。

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スタートアップの創業期のチーム作りは、特化した強みがあることが重要

-- そもそもスタートアップの採用(HR)において大事なことはなんでしょうか?

 

スタートアップのチーム作りは、十人十色であり、それぞれアプローチが全く異なりますが、特に少人数の創業期のスタートアップにおいては特化した強みがあるチームになっていることが重要なポイントと考えています。

その後20-30人くらいの組織になってくれば、組織編成が必要になります。具体的には、CEOが全体を見て、CTOが技術を担う、CFOが資金や社内管理をする人になります。この体制は最低限必要になると思います。

例えばCFOならば、そのスタートアップが大型での資金調達を志向するならば、投資銀行のようなところでのバックグラウンド、資金調達の額が大きくないならば会計士などのバックグラウンドの人材が必要となってきます。このようなスペシャリスト的な人材がスタートアップには欠かせないものです。

 

30人くらいの会社になるイメージが湧いたらプロフェッショナルチームに移行しよう

 社員30人を一つの基準にとらえています。昨今では、30人前後で上場する会社がある時代で、その後100人規模になり成長する会社が多いのですが、30人に至るかどうかをまず考えています。このくらいの規模からメンバーごとの役割が徐々に細く別れて来ます。数人の頃は何でもできるジェネラリスト人材が活躍しますが、会社が大きくなると共に自分の持ち場である担当している領域をを守るプロフェッショナルの存在が重要になります。

 

非エンジニア社長の最初の仕事は、CTOを探すこと

 社長がエンジニアでなければ、いわゆるCTOを探して来なければいけません。まずここが多くの社長がチャレンジするポイントです。インターネットサービスとは関係ないことやるなら別ですが、CTOは必須であり、例えばインターネット以外のバイオの会社をやるのであればバイオの技術について詳しい人が必要で、スタートアップと呼ばれる会社はなんらかのテクノロジーのバックグラウンドを持った人が必要になります。

社長自身が自分たちのやりたい領域に詳しければ、その後のメンバーを口説けると思うんですが、自分が詳しくなければ新しい仲間を増やすことが難しくなります。 

 

セオリーに無い方法で初期のメンバーを自力で集めるのが起業家

-- スタート地点の起業家で良い起業家かどうかなどあるのでしょうか?

 

起業家の初期の仕事は、良いメンバーを見つけて来ること、つまり採用であると考えています。もしメンバーを見つけて来るのが難しいのであれば、社長は向いていないとも言えるかもしれません。

ただし、誰しも最初から出来る訳ではありません。 「見つけないといけない」となり、すぐ動き、アクションしながら前に進める人こそが起業家向きです。最初の3人ぐらいは苦労してでも、自分1人の力で見つけられるくらいのバイタリティが必要です

また、スタートアップによくあるのが、人の入れ替わりが、必ずと言ってよいほど起きてしまいます。採る方も、採られる方も初心者である場合、その会社においてのフィット感が高い人を最初に入れるのは難しいことです。ただし、スタートアップの経験が豊富な人と言うのはそもそもあまりいないので、やりながら取り組むしか無いでしょう。

例えば起業家の方で、エンジニアを探す際に、スタートアップのピッチコンテスト、学生向けイベント、ハッカソンなどの場所で声を掛けるなどの動きはほとんどの人はしていません。

また、創業したばかりの会社が求人サイトに求人を出しただけで、エンジニアが集まってくるかというと来ることはありません。例えば現在のメルカリさんはサービスも有名、経営陣とも働いてみたい、そういう状態の会社と並ぶことになる。しかし、普通のスタートアップはそういう状態では無いので、如何に普通の人のやらないことをしてリーチを広げるかが重要です。

 

例えばRetty CEO武田さんの話は有名ですが、エンジニアじゃなかったのに創業メンバー2人で開発の勉強をして自分達でサービスを創りはじめた。その上で、エンジニアの勉強会に参加して、助けてくれる人が増えたそうです。これこそ起業家だと思うんです。(詳しくは Retty代表ブログ: Retty立上げの経緯。2011年を振り返って )

 

例えば、ビズリーチCEO南さんも、CTOの竹内さんに声を掛けて最初は断わられていることは有名な話です。断わられても粘ったかどうかなど、竹内さんは自身の会社も経営されている方なのですが、それでもコミットして貰えるなど、従来のセオリーとは違っていると思います。

 

スタートアップが上手く行かなかった時にどれだけ粘れるチームかどうか

-- 高野さんから見て、成長しているスタートアップはこの辺が違うと感じられることはありますか?

 

どこかが上手いと言うより、上手く行かなかった時に、どれだけ粘れるかの方がスタートアップにおいての底力を感じます。上手く行っている会社は、そのまま伸び続け、実はスタートアップで、これからサービスを当てる場合は参考になりにくいと思います。

上手く行ってはいないときを乗り越えて、いろんなVCやエンジェルにお願いしながら再度ファイナンスを組み立てるなど、実際苦労している方が多いです。

特に上場している会社は会社を立ち上げてから10年くらい経っている会社が多くあり、その間に何度か資金ショートしかけていたり、幹部が辞めて行くなど、実際はそんなことばかりです。

折れない心を持って、やれるかどうかということが大事で、経営者がまずはそうあるべきだし、そういう人を採用し、チームや文化を作っていかないとスタートアップは難しい気がします。

そして、自分を変えて行ける能力も重要です。起業家として成功していくためには課題がいっぱいあるはずなので、変わっていけることが重要です。

 

創業期のスタートアップの社長は時間の3割を採用に使うべき

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 -- 初期のフェーズでは起業家はチームを創るために何を意識しておくべきなんでしょうか?

社長にとって最も大事なことは、人を集めることだと私は考えています。その時に、最初は資金が満足に無い会社は、その分社長自らの時間を使ってもらいたいです。創業期のスタートアップの社長は時間の3割を採用に使うべきと考えています。

採用が上手くいかないと思うならば、どれくらい時間を使っているかを一度考えて欲しいですね。良い人を採用したい一方で、時間を全く使ってない人が結構います。

今月結局50人会って3人採用したのであれば、100人会えば6人採用に至ると言うことです。もちろん打率を上げるための努力をするのが前提なのですが、会い続けないと極端に採用の決定率・質が上がらないのです。

 

スタートアップの仲間候補に会い続けるためにはどうすればいいか

求人サイトに求人を出す、それだけでは無理です。友人・社員からの紹介や採用のためにイベントに地道に足を運ぶなどをやり続ける必要があります。例えば、人に会ってもらいやすくするために、ブログを書いてるか、Facebook・Twitterなどソーシャルメディアにて発信しているのか。

そのリーチを広げる母集団形成から、実際に入って貰うまでの最後の工程まで行動や分析をしている人はほぼいないので、これをやれば結果が出ます。そこで問題が発生すれば他社の社長でもいいし、私のようなヘッドハンターの仕事をしている人でもよく、良いところの真似をした方が良いでしょう。採用ページもない会社も多いので絶対作った方がいい。ページの更新もしていただくと良いでしょう。

 

それらをした後に、メンバーが増えてくると人材エージェント・ヘッドハンターを使うことになると思うのですが、それは、社長の時間を段々と投下出来なくなってくるからです。スタートアップは社長の時間がとても貴重なので、 その社長の代わりに良い人を探してくるのが僕らヘッドハンターの役割です。

 

私、個人としては、これらのトライ&エラーを一部でも手伝いたいと思っています。特に創業期のスタートアップであればみんなフィードバックをくれます。

上場している会社や急成長を遂げたスタートアップであっても最初は泥臭いことをやって今に至っているので、強い組織を創りたいスタートアップはこういうことを積み重ねて欲しいと思っています。

 

キープレイヤーズ並びに高野秀敏氏に関心がある方はこちら 

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