こんにちは!Skyland Ventures人事広報担当の初田です。
今回私は、当社が今年3月に投資をしたHolotch株式会社 代表の小池さんに起業に至るまでのお話や、これからHolotchが目指す未来についてインタビューしてきました!
なぜ映画製作をしてきた小池さんがARやホログラムに関してこんなに詳しくなったのか。
インタビューで過去を探っていくと、「ホログラムで映画の新しい歴史を作りたい」という現在の事業への強い覚悟を聞くことができました。
‐ 小池浩希 プロフィール ‐
Holotch株式会社代表取締役。ホログラム(Volumetric Video)の専門家。
アメリカの大学で映画製作を学んだのち、2008年に日本の映画業界で製作部としてキャリアをスタート。日本とハリウッド映画の撮影現場でマネジメント業務に従事。
映像作家としても活動し、スタートアップ での新規事業の立ち上げ〜起業と、クリエイティブとビジネスの両面を持つ起業家です。
2016年にCirque Du Soleil -TOTEM360-を監督するなど、VR/AR業界には5年以上携わっているので、積み重ねた知見とネットワークが武器。
小さいころから当たり前のように「映画を作りたい」と考えていた
Skyland Ventures 初田(以下初田):小池さんのプロフィールを見ると、映画にまつわる経歴が多いのが気になります…!まずはそのきっかけを教えていただけますか?
というか、あのX-MENのウルヴァリンの製作にも携わっていたんですか?!(密かにファン)
Holotch 小池社長(以下小池):そうです(笑) もともと母親が映画好きで、物心ついたころから映画をよく見ていました。なので小学生の頃には「将来は映画を作る」と心に決めていました。
同時に、母親の教育方針で幼いころから「あなたはアメリカに行くのよ」と刷り込まれていたので、いつかはハリウッドに行くんだ!と夢見るようになりました。そのため、大学は迷わずアメリカに進学して映画を専攻しました。
初田:でもその後は日本に帰国してフリーで映画製作に携わっていたのですよね。
小池:はい。アメリカ滞在中にリーマンショックがおきて、まともに生活できなくなってしまい帰国しました。
日本では映画業界でフリーランスの製作部として、IT業界のPMみたいに撮影の進行やマネージメント業務全般を行う現場責任者的な仕事をしていました。
初田:私のイメージですが、映画の撮影現場ってとても忙しかったんじゃないですか?
小池:そうですね、低予算の作品に複数同時進行で関わった時は、21日間フル稼働(504時間連勤)した事もあり、本当に寝てなかったです。
初田:えーーーー!すごくタフですね!!その仕事はどのくらい続けたんですか?
小池:日本でフリーで働いていたのは約4年間です。起業にはタフさも必要だと思うので良い経験だったかもしれないですね(笑)
あと、撮影現場は基本的にトラブルと決断の連続で、監督のこだわりや天候などなど、常に時間と地球との戦いで…。あらゆるトラブルを想定してリスクヘッジをする思考法は、起業してからも役に立っているんじゃないかな。
VR技術を知った2014年。エンタメ業界が変わっていくと確信した
小池:フリーの仕事は給料が安定しなかったので、ケータイショップで営業のアルバイトもしていました。
スマホを売るためにも海外のテックシーンを追っていて、スタートアップに興味を持ち始めていたタイミングで2014年にOculus DK2※を知ったんです。しかもその直後にOculusの買収をFacebookが発表して。あれは本当に衝撃でした…。
小池:これを見つけた時に、遊戯王でバーチャルリアリティの世界観が出てきていたのを思い出して「あの漫画の世界が現実になるんだ!」と興奮したのを覚えています。
VRによって、映画をはじめとしたエンタメ界も変わっていくと確信しました。
【公式】遊☆戯☆王デュエルモンスターズ「決闘者の王国(デュエリストキングダム)」編 第1話 「戦慄のブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン」
(11:20くらい「これがバーチャルシミュレーションシステム…!」)
小池:もともと大学で映画の歴史を学びながら「映画の歴史はテクノロジーの進化の歴史でもある」と思っていて。
自分も映画の新しい歴史を作りたいという思いで、そのあとスタートアップに入り、VR事業部の立ち上げを行ったりしました。
初田:スタートアップを経て起業していますが、なぜ起業して自分でプロダクトを作ろうと思ったのですか?
小池:当時携わっていたのが360°動画の製作だったのですが、 自分なりにXRのリサーチを続けるなかで、当時XRに最適化された実写の表現方法が無いということに目を付けました。
それならば、自分でVolumetric Video(VV)と呼ばれる"立体動画"・ホログラムの技術を開発し、ホログラムが当たり前に使われる世界を実現しようと決めました。
初田:映画でいうとスターウォーズでR2-D2がレイア姫をプロジェクションしているイメージですよね。
小池:そうです!
VVこそ映画の未来であり、映画の未来をつくると決めた僕がやり遂げるべきミッションだ!と思ったんです。
そしてついに起業に挑戦。バンクーバーで仲間探しに翻弄する日々
初田:バンクーバーでの起業について書かれた小池さんのnoteを読ませていただきました!
小池さんのnote①「ご挨拶-XRxAIスタートアップを海外で起業した話-」
初田:初めての起業、非エンジニアながら未開発テクノロジーへの挑戦、そして初めてのバンクーバーでの生活。とても苦労されたと思います。
もともとフリーで映画製作をしていた時から海外での生活も多かったとはいえ、なぜバンクーバーだったのでしょうか?
noteにも書かれていましたが改めて聞かせてください!
小池:バンクーバーを選んだ一番の理由は、近い将来、Cascadia(シアトル〜バンクーバー辺り)がXRの聖地になると言われているからです。
映画はハリウッド、ITはシリコンバレー、XRはカスケディアというイメージです。
優秀なクリエーターとエンジニアが集まっている地域なので、XRの開発に適した人材の宝庫なんです。
小池:私はバンクーバーでCUBIC MOVIEという会社を立ち上げ、ホログラム版のYoutubeを開発しようとしました。
しかし、初めての土地での初めての起業はやはり大変でした。知り合いもいなかったので、資金調達をするためにも、エンジニアを集めるためにも、約10ヶ月間はただひたすら人に会って夢を語っていました。
バンクーバーはスタートアップの土壌/文化の歴史も浅く、投資の機会も限られています。まして、プロトタイプも無い段階で投資を受けるなんて事は"ありえない"ことです。
しかし、私はそこで運よくエンジェル投資家からの出資が決まり、また幸運な事に僕をサポートしてくれるチームを集めることができました。
初田:比較的お金を集めやすいといわれている日本でも、何を作っていくのか・どうマネタイズしていくのかが明確じゃない起業家に投資をするのは多くはないケースだと思います。
でも小池さんは実現させた。それだけ思いが伝わったということですね。
"We are the NEXT Pixar"と言い続ける理由というnoteも最高でした!
小池さんのnote②「映画とテクノロジーとXR -映画業界出身の僕が、VVスタートアップで"We are the NEXT Pixar"と言い続ける理由-」
(note抜粋)
映画の歴史とは、テクノロジーの進化の歴史でもあります。
1985年、スターウォーズがアナログでのVFXを駆使し、SF超大作を披露しました。
1993年、ジュラシックパークがCGで超リアルな恐竜を描き、世界に衝撃を与えました。
1995年、トイストーリーが3CGDアニメという新分野を開拓し、世界中に感動を届けました。
1999年、マトリックスが、CGによるVFXを多用し、映画の世界に不可能な表現は無いと世界に知らしめました。
2009年、アバターが3D映画という新分野を開拓し、臨場感を高めた映像を提供しました。
残念ながらアバター以降10年間、映画の世界に映像革命が起きていません。そして、僕はVVこそが次の手段だと確信しています。
志半ばでチームは解散。日本に帰国するも、あきらめきれず再び挑戦することに
小池:プロトタイプは完成したのですが、次のステップに向けてさらなる資金調達をする必要がありました。
シリコンバレーで6週間資金調達に翻弄しましたが、なかなか思うようにいかず、このまま続けてもチームとして成長するのは無理だと判断し、リセットの意味を込めて解散しました。
初田:せっかく始まったと思ったのに残念でしたね…。
でもその後日本に帰国して、確かすぐSVに相談にいらしていたんですよね?
小池:はい、帰ってきて2週間後に木下さんに会いに行きました!
初めて木下さんに相談に行ったときは「これだったらVCから投資を受けれるかな」と考えて"置きに行った"事業案を持っていってしまってて…。
VCとか投資家の方ってそういう「本人が本気じゃない事業」を見抜く力があると思うのですが、見事にその時は木下さんに出資を断られました(笑)
初田:確かに、私も何度かSEEDSの面談に同席させてもらったとき、木下や投資チームのメンバーが起業家に対して「好きなことないの?自分の誇れる分野で起業しなよ」と言っているのをよく聞きます。
起業って生半可な気持ちで始めた事業だと、厳しい状況になったときに続かないので、やっぱり自分の思いを持てる事業をしたほうがいいと思います!
やっぱり自分が一番価値を出せるのはホログラム事業だと思った
初田:でも小池さんはその後も何度か相談にいらっしゃいました。
今取り組まれている事業はホログラムですが、そのホログラムに決めたきっかけがあれば教えてください!
小池:きっかけはTokyo XR Startupsでメンタリングをして頂いた國光さん(gumiの取締役会長)でした。
小池:初めて國光さんにお会いした時も、木下さんにもっていった時のような安直な事業計画で、その時はスマホで簡単に3Dスキャンが出来るアプリを提案していました。
今は3Dデータ自体が世の中に少ないので、身の回りにある物をスマホで瞬時に3Dデータ化できるアプリを作れば、VR技術の発展に貢献できるんじゃないかと思ったんです。
でもその時に國光さんに「本当は物じゃなくて人を撮りたいんじゃないの?」「なんで自分だとその事業で勝てるのか?(Why You?)」とフィードバックを頂き、この言葉がとても心に刺さりました。
やっぱり自分が一番やりたくて、自分だからこそ一番インパクトが与えられる事業のVV技術・ホログラム事業でいこうとその時に振り切れたんです。
これからHolotchが目指すもの
初田:今日は小池さんの覚悟が感じられるお話が伺えて、とても興味深かったです!
最後にこれからHolotchが目指していく姿を教えてください。
小池:はい!現在私たちは2台の深度カメラで撮影したホログラム映像を、リアルタイムでスマホにAR配信することに成功しています。
ホログラムAR配信デモ
— Hiroki/ CEO @ Holotch (@Hiroki_Holotch) 2020年3月29日
2台の深度カメラで撮影したホログラム映像をリアルタイムにスマホにAR配信しています。
Realtime Hologram Streaming demo using two Azure Kinects to iPhone as AR.#Holotch #Hologram #AR #ARkit #ホログラム #Starwars#5G #WFH pic.twitter.com/VyYSXcIeX1
初田:これを2名の外国エンジニアの方が2週間で作ったと聞きました…。
小池:そうですね。Holotchでは2週間の開発スプリントを繰り返しています。
2週間ごとに新しいプロトタイプを作り続けていて、スプリントの開始前にエンジニアとOKR(Objectives and Key Results = 達成すべき目標と、目標達成のための主要な成果)を設定することで、無理なく最短で結果を出し続け、かつロングランで疲弊しないようにマネージメントしています。
初田:調達した資金はどう活用されますか?
小池:リアルタイム配信の精度を上げていきます。まだまだプロトタイプなので、改善点が山ほどありますので。
そしてこの技術を使って、誰でも当たり前にホログラムが使える世界をまずは実現したいと思っています。
そのためにも最初は、ホログラムがどこで一番使われていくか、どの市場で広げていくかを今見極めているところです。
初田:現状、その市場の目途は立ちそうですか?
小池:はい!当てはいくつかあるので、具体的な仮説検証も今行っています。
初田:そして映画の夢は諦めていないんですよね…?
小池:そうですね!ホログラムをやっているのは映画の発展につながると信じているからなので、将来的にはホログラムで新しい映画の歴史を作ります!
初田:期待しています。本日はありがとうございました!