エンジニアが9割と占める「技術者集団」トランスリミットにおいて、唯一のプロデューサー職を務める高屋理氏。前回の記事に続き、サイバーエージェント、DeNAでプロデューサーとして腕を磨き続けてきた高屋氏に、プロデューサーとして必要なスキルとその磨き方について深く伺いました。現在プロデューサーとして働かれている方、プロデューサー職に興味を持っていらっしゃる方は必見です!
他のトランスリミットメンバーについて知りたい人は下記より。
全ての物事に理由をつける
-- 今はゲームの企画に関わるあらゆる部分をやっているということでしたが、特に時間を注いでいることはありますか?
色んなことやってるんですけど、コアとなるUXを考えるというか、このゲームが世の中に出たときにどこに価値を感じてもらうべきなのかっていうのを考えることに一番力を注いでいます。
例えば野球が楽しいっていっても色々あるじゃないですか。ホームランを打つ瞬間が楽しいのかとか、ピッチャーが投げてストライク入る瞬間が楽しいのかとか、一番根底にある「みんなが野球を好きって言ってる価値とは何か」を定義するみたいなものです。
僕らがつくってるサービスを遊んでる人がほんとにハマっていることって何?みたいなのをかたちにしていく作業ですね。
--ではまさにコンセプトというか、ゲームの中で一番軸となる部分を考えている最中ですか。
そうです。ユーザーさんにとっても、僕ら制作陣にとってもずっと大事にしていくもの。5年たっても10年たっても大事にしていくものっていうのをしっかり考えていくことが大事だと思っているので。
-- 良いプロダクト、良いコンセプトを作る上で何か意識していること、やっていることはありますか?
全ての物事にちゃんと理由をつけるというか、何でそうなってるのかを考えることっての結構大事かなと思っていまして。感覚だけじゃ戦えないので、感覚を理解することが必要かなと。
例えば今日カレーを食べたんですけど、それを言葉で理解すると、「カレーはうまい」じゃなくて、「カレーはスパイスで舌が痺れるからうまい」みたいに。
普段から経験していることや目にしたことに対して、なんでそうなってるのか仕組みをちゃんと考えて理解するようには意識しています。そしてそれを自分の引き出しにして、その引き出しの数をどんどん増やしていくんです。
全部が全部仕事に役立つわけでは当然ないんですけど、いつもなんで?なんで?と考えるのは意識的にやっています。
-- 例えばどういった形で今の仕事に生きてきてますか?
ゲームの企画とかしていくと模倣品っていっぱい出るじゃないですか。流行ったサービスに関しては特に。
でも単純にその上っ面だけ模倣してもユーザーさんって絶対に価値を感じないんですよ。そのゲームが流行った本質というか、芯がわかって初めて次の新しいものとか次のヒットタイトルって生み出せると思っているので。
だから、そういった本質を見抜く力と、その本質を踏まえて次のヒットタイトルを生み出す力になるかなと思いますね。
最初から最後までユーザーに向き合い続ける
-- ヒット作を出すという意味で、企画の面で大切にしていることはありますか? リードエンジニアの早川さんは、開発面においては「作って、壊す」を高速で繰り返すとおっしゃっていました。
とにかく企画面でいうと、ユーザーさんに最初から最後まで向き合うことが大事だと思っています。
自分が楽しいと感じたからといって、これをユーザーさんが楽しいと感じるかは全く別問題なので。自分もそうですし、誰しも自分のアイデアって我が子のように大事にしがちなんですけど、フラットな目線で、客観的に見て価値があるのかを判断できるかどうか、見極められるかどうかですね。
客観視しながらコアな部分、大事な部分を見れているかは常に考えながらやっています。
-- どうしても主観的になってしまいがちなこともあるように思うのですが、コツとかありますか?
僕の場合は、人に聞くようにしています。自分自身でも意識的にやるのはもちろんなんですけど、やっぱり人と話すとわかりますね。
例えば僕と高場くんって似てる部分、共通してる部分もあるんですけど、結構違う部分もあって、彼は結構客観視できる人だし、僕が考えてることは彼からすると客観なので、まずはそういう人に聞いてみる。
そこから自分でも確かにそうだなと思ったらまた違う考え方をして、ということをとにかく繰り返していくと、独りよがりにならずにやれると思います。
常に最高速度で走り続けるためのコンディションを整えることが重要
-- なるほど。企画に限らず、仕事で成果を出すためにやっていらっしゃることはありますか?
ここ1年弱ぐらいの自分のテーマなんですけど、とにかく安定して一定以上の質を出せることが大事だと思っていまして。一定以上の質で、安定して成果を出し続けられることが一番価値があるって気付いたんですよね。
そのために自分がどういうときにコンディションがよくて、どういうふうにしたら成果が出るのかみたいなことをすごく考えるようになりました。
というのは、僕1年前ぐらい100kgあったんですよ、体重が(笑) 今でもでかいですけど、20kgぐらい落ちてて。そこから自分のコンディションが安定したんですよね。
例えば今の時間(15時)頃って何で眠くなるんだろうと考えて、血糖値の変化だと気付いたら、意識的に食事後にコーヒーを飲んで血糖値上がらないようにしてみたりみたいな。
-- 確かにコンディションによって仕事の進み具合は変わりますもんね。
安定っていうとなんか普通すぎるかもしれないんですけど、スタートアップなので最高速度で常に走り続けられるためにはどうしたらいいんだろう?ということはトランスリミットに入って今まで以上に考えるようになりました。
質も量もすごく高い水準でやってかないと、僕ら絶対生き残っていけないと思うんですよね。僕らはありがたいことにVCの方だったり、たくさんの方にサポートをして頂けていて恵まれている方だとは思うんですけど。
でも大企業のようにお金がたくさんあって、CMをドーンって打ったりとか、人を生きに100人ガバッて採用したりはできないので、今の僕たちがいかにして勝つかを徹底的に考えないといけない。そのためには、個人個人が質も量も求めてやり切っていくしかないと思っています。
-- 食事以外でもやられていることってありますか? すごく体つきがしっかりされているな思ったんですけど(笑)
キックボクシングが好きで、キックボクシングのジムとかに通ってます。最近もう忙しくてあまり行けてないんですけど、アマチュアでデビューしようとしてました(笑)
ただ、目的は仕事で成果を出すことなので、そのためにやれることは何でもやりたいと思っていて、あくまでその一部です。
-- それでもアマチュアでデビューしようとしていたということは、かなりやりこんでいたわけですよね。
仕事以外でも徹底的にやり込むというか、やり切るということはは昔からやっています。何でもより深くやっていくみたいな。それが最終的に今企画の仕事に活きてきたりしているんですよね。
よく言われることだとは思うんですけど、自分の引き出しの数の多さが企画をしていく上では大事かなと思っていて。自分の好きなものしかつくれないと困るじゃないですか。だからそのようにして、自分の引き出しを増やしてるって感じですかね。
最初から意識していたわけではなく、今思い返すと仕事に繋がってたなということもありますし、前職のDeNAに入ってからはプロデューサーとは何か、みたいなことも結構意識してやってますね。
上司の一言で「プロデューサーとは何か?」を考えるように
-- そのプロデューサーとは何かっていうの意識的に考えるようになったのっていつぐらいですか?
本当にしっかりと考えるようになったのは、ここ1,2年ぐらいかなと思いますね。
一番最初にゲームづくりとかコンテンツづくりにハマったときって、ユーザーさんの感情に感動してハマったと言いましたけど、だんだん時間が経過するにつれて、それを忘れちゃったんですよね。
単純に数値しか見てなかったんですよ。こうやったら売上が上がったって。そこにユーザーさんの気持ちがあるってことを忘れてた時期があって。
それをDeNAのときの上司が覆してくれたというか、僕の考えを見透かしたのか指摘して下さって、改めてプロデューサーの役割や仕事について深く考えるようになりました。
ゲームの運用とかプロダクトの運用とかって、数値がわかりやすいんですよね。インターネット、Webだと特に。 パッてやったら売れた、売れなかったとか。あとはリアクション芸みたいになっちゃうんですよね。
--リアクション芸ですか?
本当にユーザーが価値を感じていることは何かとかじゃなくて、単純にアクセスが増えたから出稿するかとか、数値に直結することだけをやってしまって、結局そういうことを繰り返していると、そのゲームは何なのかがよくわからなくなっちゃうんですよね。
僕は結構数字に敏感だったので、ちょっと数字が悪いとへこんだり、ちょっといいと喜んだりしていて、その時に上司が「本当ににユーザーがこのゲームに何に価値を感じてるの?一番大事なとこは何?っていうとこを考えないとだめだよ」「それがあって、それが実現できるんだったら、一時の浮き沈みとか別に気にすることないじゃん」と言ってくれて。
そこで初めてユーザーに対して向き合うっていうのがプロデューサーにとって大事だなって気付いて、それを意識するようになりました。
世界に通用するコンテンツを作れるプロデューサーになりたい
-- 改めて振り返ってみると1番のターニングポイントっていつだと思われます?
働いて8年ちょっとで1番のターニングポイントはやっぱりDeNAで上司に「ユーザーに向き合ったいいものづくりをしよう」と言われた時だと思います。
ただのビジネスじゃなくて、本当の意味でのものづくりをしたいと思うようになったきっかけですし、自分がどんなものが作れるのか興味を持つようになりました。どんなプロダクトを作って、それがどれぐらいの人に共感してもらえるのか、と。
それ以降プロデューサーとしては変わった気がしますね。ただ数値を見て、数値が上がってバンザイみたいなことではなくて、ユーザーさんと一緒にいいものをつくって結果としてみんながハッピーになってるというか、ということをイメージするようになりました。
-- これからトランスリミットでどんなことにチャレンジしていきたいですか?
世界に向けて、世界に響くサービスを作ることがトランスリミットのテーマなので、そこはやっぱり自分としてもやっていきたいですし、そのために僕がやるべきことはちゃんとユーザーさんに向き合っていくことだと思っています。
とにかく世界のユーザーさんをしっかり見て、その人たちに楽しいと思ってもらえるものを作っていくことをとことんやります。
個人としても世界に通用するコンテンツを作れるプロデューサーになりたいですね。
-- 「世界」っていうのが、また素敵ですね。
日本の市場も勿論いいと思うし大事ですけど、やっぱりいいものをつくったらたくさんの人に遊んで欲しいじゃないですか。そう考えると世界ってすごい魅力的ですよね。
ビジネス的にいうと市場の大きさとかもあるのかもしれないですけど、単純に人としておもしろそうだなと思うじゃないですか。
トランスリミットは本気で世界に向けてやっているし、世界で戦うことを前提にしてやっているので、そこは仕事をしていてもワクワクしますよ。例えばキャラクターのデザイン1つとっても、「これって、海外だとすげく子どもっぽく見えそうじゃない?」といった会話が常にあります。
世界の人が遊んでくれること、っていうのがお題、ミッションとしてあるので、アプリのランキングとかもアメリカのものを見て、キャラクターデザインはこんなデザインがウケるんだ、ということを調べています。
やっぱり世界のことって、日本のことに比べてわからないことばかりじゃないですか。だけど、それも知る努力をすれば超えられることだと思いますし。これまでのトランスリミットはそれができていたのだと思うので。僕も同じ様に世界的に通用するサービスを企画したいと思っています。
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