月間50万人が使う買取価格の比較サイト・ヒカカク!。前回に引き続き運営元のジラフで代表を務める麻生輝明氏のお話を紹介していきます。立ちあげから半年間は利用者もほとんどいなかったという同サービスを、この1年ほどでいかにして成長させてきたのか、必見です!
前編はこちら
ヤフーの小澤隆生さんのアドバイスをきっかけにサービスを立ちあげ
-- 今は形ができあがってきているということですが、創業当初のことを伺ってもいいですか?
自分の場合、ジラフは最初は学生起業という形で始まっていて、創業当時大学の友人が手伝ってくれていていました。ただ皆が大学を卒業して就職していく際に、もう1回自分でメンバーを集めて、今のジラフメンバーになているという感じです。
-- そもそも起業したきっかけは何だったんですか?
シンプルにお伝えすれば、IVS SEEDS(以下、IVS)という起業家の方々やスタートアップ志向の学生が集まるイベントがあるんですけど、そこでヤフーの小澤さんにサービスを作りなさいと、アドバイスを頂いたことが直接的な起業のけっかけです。
-- 個人的にアドバイスをもらったんですか?
そうです、IVSにて懇親会があってそこで結構フランクに話せるんですよ。それでその翌日ぐらいからサービス作りを始めました。
-- 翌日!早いですね。
元々いつかやらなければとは思っていたんですけど、なかなか踏み出せなかったんです。
そのとき大学4年生だったんで、この機会を逃したらもうないだろうなと思ったので、ここしかない!と今のサービスであるヒカカクを始めたんです。
ただそれを成立させるためには、クライアントさんとのコミュニケーションを取らないといけなかったりとかするので、結局法人がないとまともに事業進まないからと法人化していきました。
ただ最初はほんとにサービスを作ってみようっていうすごい気軽なところから始まったっていうのはありますね。
--最初から今やっているヒカカク!という事業だったんですね。
一番最初に考えたアイデアをそのままかたちにして、いまだにそれをやっています。
--ちなみに翌日から動き出したというお話でしたが、何をされてたんですか?
正直あんまり思い出せないんですけど、ひとまず自分に開発する力がなかったので、周りで作れる人を探したっていうのがまず最初だったような気がしますね。もちろん何を作りたいかっていうの少し具体化していくってことも並行してやってたと思うんですけど。
中学生時にコミュニティサービスを立ちあげ
-- IVSに参加されていたということは、ベンチャーとか起業にはそれ以前から興味があったんですか?
元々は就職する予定だったんですよ。それが結構起業に関連する企業だったので、卒業前にそういう界隈を知っておこうと思って参加したという感じです。
起業に関してはいつかやりたいっていうのは思っていて。さかのぼれば中学生ぐらいからありました。
-- 中学生ですか。けっこう早いですよね。きっかけは何だったんですか?
中学生のときにコミュニティサイトを自分で運営してたんですよ。
その頃に世の中でインターネット企業が騒がれるようになっていて、そういうものを見ていたときに自分がやってることも仕事になるんじゃないかと思いまして。ちょっとした憧れとか興味関心を持ちました。
--コミュニティサイトというとSNSみたいなことですか?
SNSまではいかないですね。何か、掲示板みたいなものが流行った時期があったじゃないですか。あれをすごく若い子向けに作ったようなサイトというか。
ただにコード書いたりとかそういうものではなくて、ネット上にあるものをただ組み合わせただけなんですけどね。
-- なるほど。それ以降でも何かサービスを作ったりしていたんですか?
多少はありましたね。例えば大学の友人と、キュレーションメディアのような形で大学生向けのメディアを作ろうみたいことをやってみたりだとか。
ただ結局起業っていう意味でいうと特に何も前に進んでないみたいな感じで、そんな状況でIVSに参加したんですが、それがきっかけでヒカカク!を立ちあげることになり、そのまま会社を創りました。
既存のサービスでは、iPadを売るのがめんどくさかった
-- サービスを作ろうと思った時、今の買取比較サービスにしたのはなぜですか?
これも結構個人的な体験がきっかけになっているんですが、持っていたiPadを売ろうと思ったときに、既存のオークションサイトとかで売るのがめんどくさかったんですよね。
インターネット以外でもリアルの買取業者とかも考えたんですけど、何となく買い叩かれそうだなと。自分が持ってるものが正当な価格で買い取ってもらえないんじゃないかなと思ったときに、めんどくさくなったんですよ。その場面でどういう行動を起こすかって人によって違うかもしれないんですけど、自分の場合はめんどくさくなって、1年放置したんですよね。
使わないまま1年放置して、そうすると買取相場って下がっていくんですよ。売っとけばよかったみたいな思いもありつつ、とはいえどこで売ったらよかったかってわからなかったなと思って。その時に何かしら売るときに迷う人ってそれなりにいるのかなって。
友人で売るときにいくつかの店に実際に持って行って、買取価格の見積もりをもらって比較してどこで売るか決めるってことをやっている人がいて、今だと一括査定サイトっていうもの世の中に色々あるんですけど、あれを実際に行って店頭でやってるって人がいて。
これをWeb上でできないかなと思いました。そのとき自分は一括査定サイトっていう概念を知らなかったんですけど、価格.comの価格が比較できるっていう切り口がヒントになって、買取価格版の価格.comのようなものをやってみようかなと。
-- なるほど。そして実際にそのアイデアを形にしたのが今のヒカカク!なんですね。
そうですね。大体作り始めてから2ヶ月くらいでリリースしました。
最初の半年間はほとんどアクセスがなかった
--最初から順調に使う人って伸びていったんですか?
いや、最初は全くでした。最初の半年とかはほんとに全然アクセスもなかったので。検索エンジン対策(SEO)とかも正直よくわからないっていうような感じだったので、ほんとに今考えたら微々たる人数というか、「友達しかいないでしょこれ」みたいなレベルだったと思いますね。
-- ある程度軌道に乗ったのっていつぐらいだったんですか?
ベンチャーキャピタルから資金調達をした頃ですかね。
リリースして半年後ぐらいのタイミングで、East Venturesさんなどに出資をして頂いたんですけど、同じ時期にSEOに詳しい個人の方がうちに出資するかたちで入って頂いてそれまで出来てなかったことができるようになっていって、光が見えてきたみたいなのはありました。
-- 話せる範囲で構わないのですが、それ以前と何を変えたんですか?
例えばサイトのコンテンツを充実させていくという意味では、商品の情報というか商品のページも増やしてますし、商材自体も増やしました。最初スマホだけでやってんですけど、これにパソコン、カメラ、古本とか色んなものどんどん追加していって、商材の幅を広げました。
後はサイト内部の構造をどう変えるか、SEO的には内部対策っていわれますけど、そういうところをどうするかっていうところだったりですね。
-- ご自身の働き方とか考え方みたいなものにも変化はありました?
最初の半年はまさに自分学生だったんで、普通に卒論とか書きながらサービスを作っていたんですね。そもそもフルタイムワーカーではなかったわけですよ。
しかもオフィスも持ってなかったんで、その辺のカフェとか学校とかそういうところでフラフラ作ってるみたいな感じでした。なので会社っていう何か見えやすい何かがあったわけではなかったんです。
今はもちろんオフィスがちゃんとあって、しかもそこで自分以外のメンバーが働いてて、かつ仕事に本気で打ち込んでるっていう。その分かれ目がちょうど資金を調達したりとか、大学を卒業した頃でした。
就職ではなくて、スタートアップした理由
-- もともとは大学を卒業して就職するつもりだったというお話もありましたよね。その時に迷いとかはなかったんですか?
最初の半年間はどうしようかと迷いながらサービスを作ってたんですよね。最終的にうちにシードで投資をしてくれた木暮くんっていう人から「投資する」という話によって決めたんですけど。その時点までは割と迷いながらやってました。
--そのときになんでやろうと思ったんですか?
いくつかあるんですけど、1つはをそれまでに積み上げたものを捨てるのはもったいないなと。サービス始めてたりとか会社作ってしまってたりとかしていたので、引きづらいみたいな気持ちはありました。
もう1つは、当時は大学生で事業やっていても、卒業して就職する人がけっこう多かったんです。今はそういう雰囲気でもない気はしてるんですけど、当時はそれが普通でしたし、自分の身の回り見渡しても学生起業家みたいな人たちっていたんですけど、絶対やめるんですよ。
それに対する反骨心というか、「いや俺はやめないよ」みたいな見栄を張ったっていうか。
かつそのほうが挑戦的で面白いんじゃないかなと思ってそっちに振りきりました。
--挑戦的で面白い、ですか。
基本的にはやっぱやめるのが当たり前で、その中で挑戦し続けるということは何かしら勝てる要素があると思っているわけですけど、多分周りから見たら勝てないと思われているわけですよ。その中で勝てたら面白いんじゃないかなっていうところですね。
地味なことをひたすらやり続けた
-- 出資をうける頃までは全く上手くいっていなかったというお話もありましたが、それでも何かしら手応えを感じていたんですか?
サービスとしてはやったらうまくいくんじゃないかなとは思いました。ただ実際には自分がそれを作りきれたかっていうと、作りきれてなかったです。
でもそれはお金もなければ実力もないからしょうがないよねと。もし資金があれば状況は変わると思うし、作れる可能性はあるだろうし、色々変わるのかなとは思っていました。
当然ながら非常に迷ってましたけど、最終的にはさっきお話した理由によって続けることにしました。
-- そこから実際に少しずつ成果が出始めたんですよね。どうやって伸ばしていったというか、その間はなにをやっていたんですか?
最初はどちらかというとサイトをどう作っていくかとか、どういう場所にどういうコンテンツ置いてとか、どういうふうにページ整理させるかみたいなこととかを決めていったっていう。最初の半年はそういうことしかやってないです。
そこからは結局サービスをそもそも実現するために、色んな課題にぶち当たって、その1つ1つを解決していくという感じですね。ただそれがかなり難しかったんですよ。
例えば買取の相場って毎日変動するんですけど、それをどうやってシステム的に織り込んでいくのかとか。ユーザーさんが自分の持ってるものが何かわからない場合にどうやったらその人を商品ページに到着させるかだったりとか。
そういう課題を解決しつつ、地道に商材を増やしたり、商品ページを新しく作ったり、記事コンテンツを充実させたりという地味なことをひたすらやりました。
しんどい時こそ、無心でひたすら働くしかない
-- 特に大変だった時期というか、大変だったことって何でしょうか?
いくつかあるんですけど、1つは自分自身がコードを書けなかったので、エンジニアのメンバーがいないと何も始まらないんですね。エンジニアの採用はどこも苦しんでるっていう話がある中で、当然うちも苦労しました。
特にフルタイムで採用するのがすごく大変で。例えば最初週1、2とかで手伝ってくださいみたいなとこでやってもらったりとかしてたんですけど、やっぱりなかなか進まないんですよね。その中でもがき続けて精神的には結構大変だったなと。疲弊しますし。
-- それはどう乗り越えたんですか?
正直やるしかないって感じでしたね。ひたすら働く以外にないという。
-- 開発のスピードを上げたいけど、自分はできないという悶々とした状況だったんですよね。ひたすら働くというのはどんなことをされていたんですか?
まず自分が開発の勉強したりしましたし、エンジニアさんが少ない時間の中でもできるだけ効率的に動けるように、仕様をまとめたりとか小さいことでもできそうなことをとにかくやっていました。
後はコミットが少ないエンジニアさんを何人か抱えてみたいな状況もあって、その人達同士のコミュニケーションとかがすごい効率が悪かったので議論の整理とかをするとか、ログを残すとか、そういうことをやって円滑に進めてもらったりとかもしましたし。
あとはそれ以外のことをなるべく自分で巻き取って仕事して、エンジニアになるべくお金とかを還元できるようにするとか、そういうことだったりとか。
-- 本当にもう働くしかない。
休んでもなんにもなんないんですよね、結局。皆さん言うことですけど。フェーズにもよるんですけど。
その時が1番ハードでしたし、精神的にはあんまり救いがないというか。実際ゴールというか区切りがすごい先だったので。
--その当時ってどんな心境なんですか?
もうほぼ無心ですね。淡々と仕事をやり続けるというか、それ以外のことを考える余裕もなかったというのが正直なところかもしれません。
これからもっとサービスを成長させるために
-- 学生起業家は卒業したら辞めちゃうみたいな風潮に対する反骨心みたいなものが、事業を続けることの1つの決め手になったというお話もあったと思うんですけど、今はどうですか?
個人としては、今はあまり雑念というかめんどくさいことはあんまり考えなくなりました。
例えばその当時の話でいったら、普通はやめるってみんなが思うからみたいなことって、すごい周りを気にした上での判断というか決定じゃないですか。そういうことが今ではなくなってきて。
今は、本当に必要なこととか本当に優先してやらなきゃいけないことを見極めるというか、これを1番やらなきゃいけないって決めて他を捨てるみたいなことをやらないといけないなと。
これはみんな口では言うものの結局実現できないことというか、なかなかできないことだと思うんですけど、その感覚をそろそろ研ぎ澄まさないといけないなと常に考えています。
-- 確かにお話聞いている限り、本当に様々なことをご自身でやっていらっしゃいますよね。
色々整ってきたからこそ、あれもこれもやらなければいけないというのが今の状況で。
まずはそれをとにかく減らさなきゃいけないなと。自分が全部関わってるって言ったんですけど、それも絞っていかないといけないと思ってるんです。
今は、CEOとして絶対にやらなければならないこと、優先度が高いことに時間を使って、そこでちゃんと結果を出していかなきゃいけないなというところを日々考えて取り組んでいます。
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